
『あぁ、幸せ!』
そう感じたときに、脳の中ではどのようなことが起こっているのでしょう。
複雑に様々な動きが展開されているのですが、その中で今回は、神経伝達物質、その役割についてご紹介します。
1.ニューロンとシナプス
私たちの脳の中には、“ニューロン”といわれる神経細胞(神経細胞体ともいわれます)が存在します。
ニューロンの語源はギリシャ語で、「腱」や「綱」を表す言葉。
このニューロンが人間の脳全体になんと1000億個以上存在する、ともいわれています。しかし、明確な数はいまだ解明されていません。
とにかくすごい数字だということはお分かりいただけるかと思います。
私たち人間がものに触れることや、何かを見たときに刺激を受けます。
その刺激は、電気的な信号として他のニューロンに伝えられ、それが連鎖していきます。
ニューロンとニューロン自体は繋がっておらず、末端にある“シナプス”が、他のニューロンへ信号を伝える役目をします。
ニューロンが1000億個以上、そしてそのひとつひとつに100個から10万個のシナプスが存在するといわれており、脳というとても小さな世界のなかで、幾何学的な数値の神経細胞が活躍をしてくれているということになります。
なんともありがたい話です。
このニューロンから出ているシナプスは、別のニューロンとの間にわずかな隙間を持っています。
これを“シナプス間隙”というのですが、その隙間(約50分の1マイクロメートル/1マイクロメートルは1000分の1ミリ)であり、とっても狭い隙間であることが確認されています。
実は、狭い隙間であっても直接電気的な信号が飛び越える、ということは出来ません。
2.神経伝達物質の登場
そこで、神経伝達物質の登場です。
電気的な信号がシナプスまで来ると、神経伝達物質を詰めこんだ小胞がシナプス表面に運ばれて、中にある神経伝達物質をシナプス間隙に放出します。
そして放出された神経伝達物質は、別のニューロンにある専用の受容体(情報を受け取る突起物)にくっつきます。
それにより電気信号が伝わっていきます。
つまりは、神経伝達物質というものは、ニューロンから別のニューロンに情報を送る手助けをするもので、どの神経伝達物質が指名されるかで、開かれる門(受容体)が変わります。
情報がどのように伝わっていくか、その部分に大きく関わっているということがお分かりいただけると思います。
そのため、「神経伝達物質により、脳が情報処理をしている」と考えられているのです。
このことから、神経伝達物質が気分に関係しているのではないかとも言われているようになったようです。
3.前向きに必要な神経伝達物質
気分に関係していると考えられている、神経伝達物質をいくつかご紹介していきたいと思います。
ドーパミン:ワクワク・やる気物質。
デートを成功させる!そのために下調べをしているとき。または、デートが上手くいった大満足の帰り道で、多く分泌されます。
家に帰ったころ、「楽しかった」のメールが入ってくれば、今後さらにドーパミンは出やすくなります。
達成した後の喜び、そして得られた報酬で、さらに頑張ろうと努力します。
そのサイクルを生み出すのが、ドーパミンなのです。
セロトニン:癒し・安心感物質。
パートナーと早朝ランニング、そしてベンチで一休み。その瞬間に「幸せだなぁ」と感じたとき。
朝が気持ちよくスッキリと起きられたとき。
ドーパミンは、達成感に満たされた時に得られる幸福物質。
セロトニンは、癒されて安心感で得られる幸福物質。
アセチルコリン:ヒラメキと記憶物質。
シナプスの働きが向上。脳内の情報を整理整頓して、記憶が定着します。
頑張って覚えたのに、次の日になると忘れてしまっている。
ワクワクできるようなヒラメキが減ったなぁ、というかたは要注意!認知機能に支障をきたすこともあるため、不足は避けておきたい物質です。
タバコはアセチルコリンの大敵。
まずは食事で補いたい物質ですので、日々の食生活で増やしていきたいところです。
タバコを吸われる人は、吸わない人の数倍多く摂取することを心がけてください。
エンドルフィン:究極の癒しと快楽物質。
極度のストレスを感じたときに、それをリセットするかのように分泌されます。
ランナーズハイや、アスリートが試合中の痛みに気が付かなかったというときには、エンドルフィンが活躍していると考えられています。
ゆったりとした音楽を聴いたとき、瞑想したとき、ヨガをしているとき、大好きなものを食べているとき、そのようなときにも分泌されています。
神経伝達物質といえば他にも、ノルアドレナリン、アドレナリン、メラトニン、アスパラギン酸など数十種類見つかっています。
その中でも今回は、幸福や喜び、勉強や仕事の効率アップに深く関係している物質をご紹介しました。
4.神経伝達物質は不足厳禁
脳内が、外部からの刺激を受けて、信号を送るために脳内伝達物質が選択されて、信号が次々と伝達されていきます。
もし、脳内伝達物質が不足していたら?情報は伝達されるのでしょうか?
幸せ!って感じられることが起きても、不足していたらその情報は流れていくのでしょうか?
食生活の乱れや、悪い生活習慣、タバコの習慣やお酒を飲みすぎる、腸内環境が悪いと、神経伝達物質の量に大きく影響していきます。
幸せ!を感じられない、もしかしたら神経伝達物質の量が不足しているのかもしれません。
脳内で情報が円滑に流れないと、精神疾患の原因になることや、日々のパフォーマンスに影響を及ぼしますので、不足のない(摂りすぎも危険)生活を心がけてください。
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安東成道

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